都議会報道ページへのボタン

トップ>カテゴリー>文化・スポーツ|09.06.26

優しさに触れて元気に 乗馬で障害者の機能回復に効果 「ホースセラピー」広げたい 東京ホースビレッジ 野口克之・操子さん夫妻

馬に跨る和美さん 馬に乗ったり触れあったりすることで、障害者の機能回復や感情表現が豊かになるなど、その効果が注目されています。日の出町にある乗馬クラブ「東京ホースビレッジ」は、フランス国内20の委員会や団体、グループでつくる障害者乗馬連盟「ハンディシュバル」から日本で唯一、公認を受け、馬を使ったリハビリ「ホースセラピー」やその普及を進めています。同乗馬クラブ代表で、「ハンディシュバル・ジャポン」理事でもある野口克之さん、操子さん夫妻を訪ねました。
 てい鉄で「Tokyo Horse Village(東京ホースビレッジ)」と書かれた看板をくぐると、パカパカと馬が歩く乾いた音が聞こえてきます。自然に囲まれた乗馬クラブには、競馬を引退したサラブレッドやポニーなど18頭の馬が飼育されています。
 Tシャツ姿で現れた克之さん(50)は、馬に劣らず優しい目が印象的。「馬が好きなんですね」と問うと「長く連れそった女房と同じ。あまりに身近すぎて、照れくさくって、好きだなんていえないよ」と笑います。
 乗馬クラブを開設したのは7年前。別の乗馬クラブからの独立時に、障害児の親たちから請われました。「ハンディシュバル」から3つの認定資格を取得した元地方競馬騎手の鈴木久美子さん(31)=「ハンディシュバル・ジャポン」現代表=との出会いもありました。どうせやるからにはと、鈴木さんの援助でフランスに3週間留学し、「ハンディシュバル」から認定資格を取得しました。

娘が話し歌えるほどに

最初は仰向けになって股(こ)関節を柔らかくします 高校卒業後から父親の乗馬クラブを手伝うなど、馬との付き合いが長い克之さんも、改めて「ホースセラピー」の効果に驚かされた出来事があります。
 野口夫妻には、障害を持つ双子の娘がいます。都内の特別支援学校に通う和美さん(17)は、生まれつきの脳性まひで歩行はできません。それが、乗馬を始めて、ひざ立ちができるようになり、言葉も発するようになったのです。
 実際に車いすから馬に乗ってもらうと、しばらくすると股(こ)関節がやわらかくなって介助なしで騎乗できるようになり、和美さんに満面の笑みがこぼれました。操子さん(48)は「(娘は)話すことはできないと思っていたんですよ。それが、いまでは『少し黙ってよ』っていうほど、しゃべるようになったし、馬に乗りながら歌うようにもなったんですよ」と目を細めます。
 こうした効果は、馬の独特の動きで上下、前後、左右に揺られる騎乗者が、自然にバランスを取ろうとすることで脳幹を刺激し、さらに筋肉や平衡感覚の発達などにつながるとみられています。社会生活への適応が困難な人も、馬の世話を通して、自分に自信を取り戻し、社会復帰できた例も多数あると克之さんはいいます。
 「どんなに重い障害があっても、ほとんどの子は乗ることができます。馬といっしょに歩くだけでもいい。表情も見違えるほどよくなります。馬は人を見るし、癒してもくれる」。 このクラブで働きながら馬の調教や管理の勉強をしている成瀬永美さん(21)も、人間関係で悩んでいたときに、馬に救われた一人。「馬って優しいですよ」とにっこり。

福祉も勉強したい

 克之さんには、悩みもあります。せっかく効果があると分かってもらえても、途中でやめてしまう人が少なくないからです。「親が仕事で忙しいと、子どもを連れてくる時間は取れない。経済的な問題もあります。福祉の分野も勉強しないとだめだと感じている」そのことを痛感したのは、フランス留学のときにハンディシュバルで出会った、障害児の母親の言葉でした。「国が子どもの将来も面倒を見てくれるから、子どものためにお金を残す必要はないのよ。だから私はボランティア活動もできるの」
 実際、ハンディシュバルの施設は、病院や障害者施設のなかにもあり、国の補助で馬に安く乗ることもできます。さらに、登校拒否の子どもは、馬の世話をすることで学校の単位を取得できたり、国の補助でほとんどの子どもが電動の車いすを使用していることも分かりました。日本の現状と、あまりに隔たりが大きかったのです。
 克之さんはいいます。「もう一度渡仏して、福祉制度の勉強や、より高いレベルの認定を取得して、ハンディシュバルの活動を日本中に広げたい」。夢は大きく広がります。 

ハンディシュバル・ジャポン―東京ホースビレッジ

 馬を使ったリハビリやその普及、ボランティアのほか、インストラクターの養成やフランスでの障害者乗馬の研修などを実施。利用するには入会金、年会費などを支払い会員になるほか、会員以外でも体験乗馬や馬とのふれあいができるコースがあります(有料)。一般の乗馬クラブとしての活動も行っています。

問いい合わせ:042(597)7633  ホームページhttp://horsevillage.web.fc2.com

(「東京民報」09年5月31日号に掲載)